アジアの国々で増えるベッグパッカーとは?
大きなバックパックに荷物を詰めて、低予算で世界中を旅するバックパッカー。
LCCで安く航空券が手に入るようになった上に、インターネットの普及でチケットや宿の手配も簡単にできてしまう現在、バックパック一つで世界を旅することは昔よりも簡単になったように思われます。
いいホテルに泊まり、べたな観光地に連れて行ってもらえるツアーも安心で楽ですが、現地の人と触れ合い、マイナーなスポットを訪ね、食べたことのないローカルフードに挑戦できるのがバックパッカーの楽しみですよね。
東南アジアの国々は、物価も安く、南米やアフリカの国々と比べて比較的治安もいいのでバックパッカーに人気です。
そんなアジアの国々で新たな問題となっている「ベッグパッカー」。一体どのような問題なのでしょうか。
ベッグパッカーとは?
ベッグパッカーとは英語の「beg」(物乞いをする)と「backpacker」(バックパッカー)を合わせて作られた造語です。
その言葉が示す通り、ベッグパッカーとは物乞いで得たお金で旅行をする人のことです。
堂々と「旅費が尽きたのでお金をください」と書いた札をもって座り込んだり、「あなたは私の旅の支援ができます」と書いた札を持ちフリーハグを3時間ほどしてお金をねだったり、はては自分で作った、もしくは撮ったというアクセサリーや写真を売ったりしてお金をもらおうとしたり。
フリーハグやアクセサリー販売はちゃんと働いているじゃないかと思われるかもしれませんが、観光ビザで入国した場合、入国した国で収入を得るのは不法なのです。
発展途上国での物乞い
このベッグパッカーと呼ばれる人たちは、いわゆる先進国と呼ばれる国からきた旅行者が多いそうです。
自分たちの国で、きちんと働いたりアルバイトをすれば、途上国で物乞いをして得る額より多くのお金を稼ぐことができるわけです。しかし、それをせず片道旅費+αくらいの資金しか準備せず途上国に入国し、そこで物乞いをして次の旅の資金を稼ごうとするのはいかがなものでしょうか。
実際に物乞いをするしかない状況の現地の人たちは、その日の生活費や食費、または子供の学費のために施しを請うてるのであって、自分たちが人生を謳歌するための旅費を請うてるわけではないのです。
人の善意を踏みにじる行為
そして、もっと悪質なのは旅費にするためと言い物乞いをして集めたお金が、旅費に使われずにベッグパッカーの遊興費に使われることが多々あるということです。
アジアの途上国の中にはとても信心深い国もあり、困った人を助ける・困った人に施しをすることが徳につながると考えている人も多いのです。貧しくて海外旅行に行くチャンスもない途上国の人が、先進国から来た「困っている」旅行者に施しを与えてくれるというのは、善意以外の何物でもありません。
その善意を踏みにじることは恥ずべき行為だと思います。
対策を始めた国も
この悪質なベッグパッカーの増加に、対策を始めた国もあります。
2017年にはタイが、観光ビザで入国する観光客は、一人当たり必ず2万バーツ(約6万6000円)を所持するよう規定を作りました。また、ベトナム・キエンザン省観光当局では同年「ベトナムでの物乞い行為は禁止」という明確な立場を表明しました。
異国を旅するということは一種の冒険です。どんなことが起こるのか、どんな違いがあるのか、どんな体験をするのかドキドキするのは旅の醍醐味だと思います。しかし、そのドキドキはポジティブなもので、決して旅費がたまるかどうかわからずドキドキするのドキドキと同一ではありません。
旅行者も現地の人もどちらも楽しい気持ちになるのが旅行なのではないでしょうか。