ファーストキスの味は?なんて言いますが、甘酸っぱい思い出どころか、大変なことになる場合があります。
そう、キス病です。
唾液による接触感染で、思春期以降に初めて感染したときに発症するので、キス病なんて名前がつけられていますが、正式には、伝染性単核球症といいます。
心配かもしれませんが、日本人の場合、9割以上は免疫がありますので、かなりの確率で大丈夫なのですが、発症すると大変なことになることもあります。
目次
キス病(Kissing disease:キッシングディジーズ)とは
キス病(Kissing disease:キッシングディジーズ)は、EBウイルスによる伝染性単核球症といいます。
唾液を介した接触感染によって、人から人へうつります。
EBウイルスとは
なんとなくカッコイイ名前のウイルスで特別っぽいですが、実は、そんなに珍しいウイルスではありません。
ヘルペスウイルスの一種で、日本人の場合、3才くらいまでに約70%が感染し、20才代では、90%以上が抗体を持っています。
欧米人の場合は、抗体保有率が低いとの報告もあるので、国によっては、キス病が多いかもしれません。
EBウイルスは、略す前の名称は、発見者の名前をとって「Epstein-Barr Virus:エプスタイン バー(ル) ウイルス」と言いますが、略して使われることが多いので、医療関係者でも正式名称を知らない人も多いかもしれません。
EBウイルスは、キスだけでうつるの?
唾液による接触感染ですから、ペットボトルの回し飲みなんかで感染する場合もあります。
子供のころ、間接キスとか言ってたのも、あながち間違いではないですね。
EBウイルスが標的とするのは、咽頭とBリンパ球
EBウイルスは、EBウイルスを含む唾液に接触することで感染します。
最初は、咽頭上皮細胞に感染します。
そこで、ウイルスが増殖して、次に、標的細胞の主にBリンパ球に感染します。
ちょっと難しく説明すると、ウイルスには、エンベロープという殻があり、その殻の特定の目印タンパクが、Bリンパ球のレセプターに結合することで感染します。
このレセプターは、 Bリンパ球だけでなく、咽頭上皮を含む上皮細胞にも発現しているので、最初、咽喉にも感染するのです。
逆に、レセプターを持っていれば感染するので、一部、Tリンパ球やNK細胞(natural killer cell)にも感染する場合があります。
EBウイルス感染の症状
4 〜6週間の潜伏期を経て発熱、咽頭扁桃炎がおこります。
そして、リンパ節腫脹、発疹、末梢リンパ球増加、異型リンパ球増加、肝機能異常、肝脾腫などがおこります。
要は、EBウイルスが最初につく咽頭が腫れて、リンパ球に感染するとリンパ球が変形し、それを捕捉する肝臓や脾臓にも影響がでて、また、感染リンパ球を攻撃する別の型のリンパ球が増加します。
自覚症状としては、発熱、だるさ、食欲不振などがあります。
黄疸がある場合もあるようです。
重症化すると、脾臓破裂などもあります。
まれに、EBウイルスが持続的に活動して、症状が数ヶ月以上症状も持続する場合があります。
慢性活動性EBウイルス感染症と呼ばれ、全身状態が重篤となり予後不良の場合があります。
診断
臨床症状や年齢などの患者背景に加えて、この異型リンパ球増加が認められれば、診断がつきます。
治療と予防
咽頭炎を細菌性と診断してしまい、ペニシリンを使うと皮疹がでやすくなります。
ペニシリンを使って薬疹が出たという薬アレルギーを持っている人は、実は、この感染症だった可能性もあるかなと思います。
特別な治療法はなく、対症療法になりますが、肝脾腫が強い例では、脾臓破裂が起こることもあるので、安静になります。
通常2か月以内に症状は自然治癒します。
予防は、キスするなとも言えないので、特にありません。
ペットボトルの回し飲みでうつるのは、気をつけることはできるかもしれませんが。
ただ、日頃から、免疫力の低下を招かないように、睡眠と栄養をしっかり取って体調管理しておいた方が良いかと思います。
全員がひどくなるわけではないので、そんなに心配いらない
このEBウイルスに感染した場合の経過は、年齢によります。
乳幼児期では、症状が現れないことが多いです。
精密検査することはないので感染を知らないまま、抗体を持ってしまうことがほとんどです。
感染源は親で、日本人では、3才までに約70%が感染します。
思春期以降では感染者の約半数に症状がでます。
風邪のような症状がだけで軽く済んだ場合は、感染を知らない場合もあります。
20才代で9割を超える人が抗体を持っていると言われています。
子供のころEBウイルスに感染していないために抗体を持っていない人が、EBウイルスを持っている人の唾液に、キスなどをして接触した場合にうつるので、確率的には少ないですよね。
しかも、感染しても、重症化しない場合もあります。
よって、そこまで、神経質になる必要がありません。
キス病のまとめ
キス病は、EBウイルスの感染症で、伝染性単核球症のことです。
唾液による感染なので、キスでうつりますが、ペットボトルの回し飲みも危険です。
潜伏期間は1か月半以上もあり、忘れた頃に発症することがあります。
発熱やのどの痛み、リンパの腫れ、脾腫などの症状がでます。
ただ、日本人の抗体保有率は20才代で9割以上あるため、発症する人は多くないですので、過度に心配しなくて良いです。