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小林麻央さんも罹患した末期乳がんも治る時代はもうすぐ

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小林麻央さんが、小さなお子さんをのこして亡くなられた原因は、乳がんでした。
乳がんに限らず、転移した癌は、手の施しようがなく、医学が発達した現代でも、まだまだ死亡率の高い病気の一つです。
しかし、2018年6月4日付けで、Nature Medicineに発表された報告には驚きました。
免疫療法で乳がんが治ったというのです。実用化は先の話になりそうですが、希望が持てる発表ですね。

乳がんが治る免疫療法

本文はわかりにくいので、簡単に要約しておきます。

リンパ球を体内に入れたら乳がんが治った

乳がんは、体のあちこちに転移し、治療が困難です。
今回の報告では、まず、がん組織から、がんのタンパクを標的とするリンパ球を取り出し、増やして患者に戻しました。
同時に、免疫活性化作用のある「IL-2」や、がん細胞に対する免疫細胞を活性化させる「免疫チェックポイント阻害剤」も投与しました。

そうしたら、乳がんが完全に治ったとのことです。

2018年6月4日付Nature Medicine

Immune recognition of somatic mutations leading to complete durable regression in metastatic breast cancer

という題名で発表されました。

「metastatic」というのは、「転移性の」という意味です。
「metastatic breast cancer(転移性の乳がん)」ということは、転移しているくらい末期の乳がんに近いとも言い換えることができるでしょう。

その転移性のがんはどうなったのでしょうか?
「complete durable regression」の状態になったのです。
regression of tumorで、腫瘍の退縮という意味ですので、「転移性の乳がんにおいて完全で永続的な退縮」、すなわち、乳がんが完治したのです。

 

さて、「Immune recognition of somatic mutations」が、乳がんの完治をさせたということですが、これはいったいどういうことでしょう。
これは、本文を読んで理解していきましょう。

メラノーマ、喫煙が引き起こす肺がん、膀胱がんなど高度なレベルの突然変異(somatic mutation)の癌には、「checkpoint blockade」「the adoptive transfer of antitumor lymphocytes」を使った免疫療法が効果的であるのに対して、胃腸がん、乳がん、卵巣がんのような上皮癌は、突然変異率が低レベルで、免疫療法はあまり効果がないとされてきました。

ちなみに、「somatic mutation」とは、生殖細胞以外の体細胞に起こる突然変異、がん化の原因となる突然変異などです。

checkpoint blockadeとは、日本語では、(免疫)チェックポイント阻害です。がんが、免疫細胞に対してかけているブレーキを解除し、はたらきが弱くなった免疫細胞が再び活性化してがん細胞を攻撃する癌の治療方法です。

the adoptive transfer of antitumor lymphocytesとは、直訳すれば、抗腫瘍リンパ球の養子移植です。がん細胞に反応するリンパ球を再活性化して、体内に入れる治療法です。

突然変異遺伝子にコードされているタンパクを特異的に標的とする自己リンパ球を体内に戻すと、転移胆管がん、大腸がん、子宮頚がんの患者において、臨床的にがんが消退しています。

今回は、突然変異に対応する4種のタンパクのSLC3A2, KIAA0368, CADPS2 and CTSBを標的とする腫瘍に浸潤しているリンパ球により、治療された乳がん患者 (化学療法抵抗性ホルモン受容体(HR)の患者)一人について、報告されています。

リンパ球を体内に戻すと同時に、IL-2免疫チェックポイント阻害剤を併せて投与することで、転移性乳がんが完治しました。
そのリンパ球は、癌細胞に浸潤していたリンパ球で、突然変異遺伝子に由来する特異的なタンパクを標的としています。

現在、22か月間、腫瘍は退縮したままで、再発はないようです。

免疫活性化作用のあるIL-2

IL-2は、主に活性化されたT細胞により産生され、T細胞、B細胞、マクロファージ等の細胞に対して作用します。
T細胞の増殖及び活性化、B細胞の増殖と抗体産生能の亢進、単球・マクロファージの活性化、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の増殖・活性化、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK細胞)の誘導などが挙げられ、様々な免疫機能の活性化に関与しています。

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